「太陽のせい」

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台風13号は、未明にかけて関東沿岸を通過したそうだが、陋居のあたりでは、心配していたほどの豪雨にはならなかったようだ。この台風が、大嫌いな夏の季節を追い払って涼しくなってくれると嬉しいのだが。

夏の間、私は自分がカミュの「異邦人」にでもなってしまったかのような気分になる。週末に外出しても、周囲との間に湿った薄い膜があるかのような感じだ。周囲で起こる一切の出来事に無関心かつ無気力。それは夏の「太陽のせい」なのかもしれないが...。

さて、土曜日の午前中恒例のペインクリニックでの治療を済ませて、駅の近所を散歩する。 駐車場の砂利敷きの上に映った自分の影。撮影しているのは、持参した携帯に搭載されているおチープなムービーカメラだ。

 しばらく歩いたところで奇妙な被写体を発見。くすんだ朱色に木目のようにも見える模様が面白い。ズームアウトしてみると、民家の鉄製の門扉だ。それにしても、何とも言えない趣がある。こういうのを「けしき」と言うのだろう。

 空を見上げると、台風一過の青空に真っ白な雲が浮かんで見える。夏の盛りの湿気を帯びた無気力な青空とは明らかに違う引き締まった青だ。トタン板の高い壁の上に、夏の間に茂った得体の知れない植物が、風に揺られている。一体、この壁の上には、何があるのだろうか。だらしのない様子からして、屋上庭園などという気の利いたものではなさそうだ。あるいは、以前はそのように意図して作られたものが、手入れもされず放置されているのだろうか。実際に上ってみると、意外に「荒れ庭の風情」というのが感じられるのやもしれない。

 この壁が面しているのは、ビルの谷間の駐車場だ。晴れた土曜の午前中には、他に誰もいない。携帯のマイクが捉える不思議な風の音のかなたに、犬の鳴き声と線路を走る電車の音が交錯する。


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